傷つくのが怖いから選ばれない?

フランス、トゥルーズ

 

今とあるヨーロッパのバレエ団でお仕事中。

数年前に新作として初演を迎えた作品が

再演になる為、

改めて作品のクォリティを戻し、

さらに磨き上げるためのリハーサル。

 

初演の際には時間がなく

準備が間に合わなかった

セカンドキャストにできればチャンスを…

とのバレエ団のご意向。

もちろん!

私としても嬉しいし、是非とお答えしました。

 

ただ毎度お馴染みトリプルビル

(一晩で3作品上演)の問題点。

2つ、3つの作品に選ばれているダンサーさん

身体を2分割できるわけではなく

他の作品のリハーサル時間や

振付家、または指導の方々の希望も考慮すると

なかなかスケジュールが難航する。

 

カバーのキャストも然り。

あちこちのリハーサルに行かされて

どうも上手くリハーサルに参加できないことも多い。

 

改めて以前カバーだったダンサーさん達に質問。

どこをカバーしてたっけ?

「xxxさんの場所…」

オッケー、何か覚えてる?

「No」

だよね。

 

ただ私も今回は作品を教えに来たわけではなく

ゼロから教える時間はない。

とりあえずファーストキャストの後ろに付いて

少しづつ振り付けを覚えてもらい、

その状況を1週間見ながら

最終的に誰がセカンドキャストを踊るのかを決めました。

 

当然ダンスの世界はフェアではなく

どうしても選ばれない人が出てきてしまう。

 

そんな中でかなり激しく落胆を見せた

ダンサーさんがいました。

(落胆というか…怒ってた!)

 

上手で器用なダンサーさん。

でもどうしても私の目には

一生懸命に見えない。

他のダンサーさんが

「どうにかして!」と切磋琢磨している中

どうも中途半端な感じ。

 

個人的には今の時点で

できていなくても

一生懸命な人は

必ずなんとかやり遂げると信じている。

だからこそ中途半端さんは…

ごめんなさい

になる。

 

自分が選ばれなかった事に

かなり怒っていたので

バレエマスターさんに

いつもこうなのかと質問してみたら

どうやら最近似たような事があったらしく…

 

一生懸命やって

また選ばれなかったら傷つくから

 

じゃないかと。

 

正直なところとてもやるせない…。

同じような経験を私も散々してきた。

でも今だからわかる。

 

誰だって傷つきたくない。

でも傷つくのを恐れて

中途半端にしかリハーサルに取り組めないダンサーさん、

自分の力を発揮できていないダンサーさんを

同じように傷つきたくないけれども

100%切磋琢磨している仲間達の手前

どうして抜擢できようか?

 

今年は大学院の最終学年になった。

卒業論文の準備中で

ダンサーの「アイデンティティー」に関する文献を

最近多く読んた。

またゆっくり書きたいと思うけれども

一言で言うと

ダンサーの多くは幼少期から

 

ダンサーの自分と

プライベートの自分を混同して育つ

 

役に選ばれないと

 

自分が「何かをできなかった」ではなく

自分が「人間として拒否された」気持ちになる

 

私も同じだった。

 

だからこそどこかで

逃げ道を作った

このダンサーの気持ちは理解できる。

 

でも結果はどうだろうか?

自分が望んだ結果は

どちらにしても出ていない。

 

絶対に選ばれたかった

でも選ばれなかったから

イラついている。

 

でも…これだけ競争の激しい世界で

100%を出さないチョイスは

残念ながらないと思う。

 

そして過酷さは

これからさらに増す。

その選ばれなかった配役のカバーとして

これからもリハーサルに出なければいけない。

 

そんなことになるなら

傷つくのを恐れるているのと

ベストを尽くして

選ばれるチャンスにかけるのと

天秤にかけたら…。

 

ダンサーの世界厳しいです。

できるだけ傷つかない考え方

マインドセットを得て

繊細な自分を保護してあげないと

長続きは無理。

 

いやぁ…。

毎日このダンサーさんを見ているの

辛くなりそうなので

様子を伺いつつ

お話しできたらと思います。

 

 

写真:トゥルーズ、フランス

Leave a Comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *

CAPTCHA